[働き方] リモートワークにおけるコミュニケーションについて
こんにちは。小室です。2014年の10月から北海道札幌市に移住し、1年ちょっとが経過しました。
基本的にリモートワークで日々の様々な業務をこなしているのですが、そこで気づいたリモートワークにおけるコミュニケーションについて振り返ってみたいと思います。
リモートワークにおけるコミュニケーション
リモートワークにおけるコミュニケーションは各社色々と工夫しているかと思います。ただやはり大半はチャットツールを基本にしているのではないでしょうか。代表的なところだと以下の様なサービスでしょうか。
いずれも文字チャットをベースとしたコミュニケーションツールです。
チャットは日常会話の延長ではない
文字によるコミュニケーションはどんなツールに頼っても、実際にF2Fで会っている人たちとの日常会話に比べると情報量はかなり削られます。これはチャットにおける会話という情報はあくまで文字であり、文字で書かれた情報に本来付随している空気や暗黙のうちに共有されている前提の情報が省かれているため、情報の発信側と受信側では状況の認識がほぼ確実に異なります。この事は発信側・受信側も双方が理解する必要があります。既に何度も語られているかとは思いますが、以下の情報は意図的に文字に起こさなければ欠落する情報です。
- その言葉を発した暗黙的に共有されている前提(ちょっと前にお客さんから電話が来て少し揉めていた、など)
- 会話の空気(緊急を要するほど相手が怒っているのか、それともある程度余裕が有るのか、など)
- 指示語が指す対象(発信側は思考の延長から言葉を発している可能性があるため、これはチャットでのコミュニケーションに限らない。実際の会話でも不明なことは多い)
色々と反論があるかと思いますが、これら3つはチャットでコミュニケーションを取るのであれば必ず入れる必要があります。そうでなければ、正確に意図を読み取り、発信側の満足する回答を得られることは限りなく0に近いと思って良いでしょう。
また受信側も前提や指示語が曖昧な場合、確認を怠ると、勝手に前提・指示語の対象を想像し、全く見当違いの行動を行ってしまう可能性があります。
ちなみにGithubなどでのPull Requestのコメントなどでもたまに見かけるのですが、文字のメッセージだけを見ると「これ、喧嘩売られてる?」や「なんかすごい勢いで人間性を否定されてる?」みたいなものも見かけます。恐らく発信側はそんな感情は露とも思ってない(と思う)ので、受け取り手の問題なのでしょうが、文字だけのコミュニケーションはかなり難しいと思いました。周囲にある発信者の感情などを勝手に想像することが出来てしまうのが怖いところですね。
よろしくないコミュニケーションの例
2ケースほど悪い例を上げ、何が問題かを考えてみます。
「あれ、アプリ側はどうすれば良いか考えておいてください。」
極端な例ですが、日常会話の延長という認識であるならば充分起こりうるケースです。最悪のサンプルの1つとして想定してみます。 *1
前提として「お客さんから機能の不足の指摘があり、直前に緊急の電話があった。納期が迫っているため、今のスケジュールで実装に含めることは可能なのかを緊急に知りたい」というものがあったとします。
同じ現場にいる人間であれば、「緊急であること」「何を知りたいか」あたりは何となく推測することが出来ますが、リモートワークなどで遠隔地で作業をしている場合、これらは伝わりません。
- 問題点1: 「あれ」の対象が発信側と受信側で認識が同一である保証がない
- 問題点2: ゴールが全く明確でない指示。丸投げともいう
- 問題点3: 優先度が読み取れない。今日中?今週中?
相手とF2Fで顔を合わせていたり、同じ居室であればもう少し読み取ることができますが、文字に落とした段階で補助的な情報はすべて削除されています。そのため、この場合は間違いなく発信側の意図した結果を受信側が提出することはできません。また、エンジニアは割り込みの作業を嫌います。そのため、前提なり理由なりをハッキリさせないと、曖昧な指示をしてもすぐに作業をしてくれることはないかもしれません。
万が一期待通りの結果を出したとしたならば、それは単なる偶然であって、決して狙って出来るものではありません。この指示から意図通りの成果物を期待するのは間違いです。
ではどうすればよいでしょうか。
以下のように改善するだけでもコミュニケーション不足による認識違いは、大幅に減らすことができます。
解答例
「yyyy/MM/dd HH:mmにXXさんからBacklogに起票のあった◯◯の不足機能の件についてなのですが、スマホアプリ側はどのようにすれば実装できそうか、次のリリーススケジュールまでに間に合いそうか、を確認してもらえますか?一旦今の作業を中断して最優先で対応をお願いします。緊急のため今日中に回答お願いしたいです。」
こちらであれば緊急度合いも分かりますし、理由、期間もハッキリしています。そのため、指示を受けたエンジニアは現在の作業を中断し、すぐに作業をしてくれるかもしれません。
「冗長で面倒くさい」「なんでそんなことまで説明しなければならないのか」と思うかもしれませんが、これくらいの情報量が日常会話では「空気」で共有されています。しかし、現場にいない人間には知る由もありません。これは、お客さんとの会議の結果を参加していないメンバーに共有する場合も同様です。
- 前提
- なぜそれが必要なのか
- 優先度は
- どんな成果を期待しているか
上記の観点の情報は含めた方がスムーズです。これらができていないと、発信側、受信側双方に認識の違いが生まれ、リモートワークでの仕事はうまくいかなくなると思います。
期待してるものと違う場合「自分が指示したのはこれじゃない。やり直してください」
指示に対する正確な成果物が出てこない場合、これは指示側(発信側)の責任の方が重いと思っています。文字による情報による指示の伝達は、受信側が曖昧に認識しないような材料、条件によるお膳立てが必要です *2
- 問題点1: 期待したものが出てこなかったため批判、非難から入る
- 問題点2: 具体的に何がどう違うのかの説明がない。
まず、人間相手にコミュニケーションをとっていることを認識した方が良いです。そのため、どんなに期待したものと違っていたものが出てきたとしても、批判や非難から入ることを避けます。まずは発信側は期待していたものと違うものが出てきた場合は、自身の説明不足だという認識を持つと良いかと思います。
解答例
「作業ありがとうございます。内容を確認しましたが、一部認識が異なる部分がありました。こちらを修正してもらえませんか?◯ページのXXの部分は、メンバーの作業の内訳がわかるような資料にしてもらいたいです。」
まずは、自分の指示に対して作業をしてくれたことに対して感謝を伝えたほうが良いです。「仕事なんだからやって当たり前だろ。」と思われるかもしれませんが、感謝の一言はワンクッションとして重要だと思います(どんなに怒っていても)
この辺りは毎日の食事を作ってくれるパートナーに感謝するといった、家庭内での事情と同じなのではないでしょうか? *3
[追記] 電話・音声通話について
上記の問題点を解決する手の一つとして、「電話・音声通話を使えば良いのではないか」という話があります。こちらはその通りです。ただ、こちらもすべてを解決する銀の弾丸ではないことを認識する必要があります。
電話・音声通話は同期通信であることがメリットであり、デメリットでもあります。同期通信であるため、相手の作業に強制的に介入します。そのため、作業中のエンジニアなどはこの強制的に介入されるのをひどく嫌います。特に電話・音声通話の場合、一度相手が確実に反応するというのを覚えてしまうと、どんなものでも電話・音声通話で割り込みをしようとする人が多いのもまた事実です。そのため、電話などを利用する場合は以下の部分に気をつければ良いのではないでしょうか
- 電話しなければならない要件をトリアージする(緊急にどうしても必要な時だけに絞る)
- 電話すべき明確な理由を提示する
上記がきちんと発信側で認識できていれば強力なコミュニケーションツールとなると思います。エンジニアが電話を嫌う理由は、しょうもない要件のために自分の作業が中断されることが多いことかと思います。
まとめ
地方からリモートワークをしてみて、色々とコミュニケーションについての気付きがあった一年でした。
ここの記事で書いたようなことに注意して、現在のプロジェクトメンバーとはチャットベースでコミュニケーションをとりながら、プロジェクトを進行させていますが、コミュニケーションによる問題というのは減少したと思います。前提が抜けていれば、「前提を教えて下さい」と指摘が来ますし、「ありがとうございます」やエモーションアイコンを使い、感情を付随したうえで伝えるようにしていることも良い習慣になっているのではないでしょうか。
リモートワークがここ最近非常に流行っていますが、リモートワークにすることで仕事の質が下がるのではなく、仕事の質が上がるような働き方として認知されれば良いなと思っています。そのためには、コミュニケーションの方法を今までの日常会話の延長から今一度見直す必要があるというのを知っていただければ不幸なケースが減っていくと期待して、自分の今年最後の記事とします。
来年もまたよろしくお願いします。